Photo:Fricker – robert cullen
フランス・パリで1992年に開業した「ディズニーランド・パリ」が、来場者の居住地によって異なる入場料を設定し、英国人やドイツ人に対して不当に割高な料金を徴収しているとして、欧州連合(EU)が調査に乗り出したことがわかりました。
フランス人・ベルギー人には割安に設定、「単一市場」の原則に抵触か
複数のメディアによると、ディズニーランド・パリは入場料金を、フランス人の来園者には安く設定しているのに対し、英国人やドイツ人には高い設定にしていたとされ、ドイツ人に対する価格設定は、フランス人の1.8倍以上高い入場料だったと報じています。
そのほかフランス人には大家族割引や特別レート、年間パッケージ、料金の月賦払いなどの恩恵があったといい、またベルギー人もフランス人に準ずる割安料金だったことが判明。そのため消費者からEUに対して、こうした状況の解消を求める声など苦情が寄せられていました。
EUでは季節要因や需要変動といった特別な理由がない限り、域内各国の企業に対して、居住国や国籍を理由に価格差をつけることを禁じています。今回の調査は、EU域内であればどこにいても同じ価格で物やサービスを手に入れられるという、「単一市場」の原則に抵触すると判断したとみられます。
欧州委員会は、デンマークのレゴランドやチボリ公園、ドイツのヨーロッパ・パークなど、ディズニーランド・パリの競合相手についても調査しましたが、同様の価格の上げ下げが行われていないと確認しています。
ディズニー側「各国向けの販促策も実施、各国の休暇期間なども考慮している」
この問題に対して、EUの欧州委員会の広報担当者は「消費者・消費者団体から多くの苦情が寄せられており、他のテーマパークなどについても調査したが、ディズニーランド・パリのように大きな価格差があるところは見つけられなかった」と説明。
同委員会の委員も、「このような慣行が客観的に正当化される理由を見つけるのは困難だ」とコメントするなど、EU側はディズニー側の価格設定の異常性を強調しました。
一方ディズニー側は「販売促進を目的とした割引を除いて一般的なリゾート・パッケージをディズニーランド・パリから直接購入する場合、為替レートによる差を別にすれば、域内全ての国で同一料金だ」と反論し、「各国から来園客を引きつけるための特定販促策も行っており、その中には割引も含まれる。各国の休暇期間や予約パターンなども考慮している」として、正当性を訴えました。
EUの欧州委員会はフランス当局と合同で調査を行っており、結果次第ではディズニーランド・パリが摘発される可能性もあるとしています。
EUはディズニーを狙い撃ち?
EU側がこうした域内の”差別的価格差”に目を光らせる目的は、特定地域の消費者を一定のサービスからしめだす「ジオブロッキング」(地域制限)の根絶です。実際EUは7月23日(木)に英国のスカイTVと、ディズニーを含む米映画会社大手6社が、一部を除くEU諸国に対してスカイTVを視聴できなくしているとして提訴しています。
7月29日(水)付の英紙ガーディアン(電子版)は、今回の調査が「この提訴のわずか数日後に行われた」と指摘し、EUがディズニーを狙い撃ちにしている可能性も示唆しています。